報告者らは、β-ジケトンで化学修飾した金属アルコキシドから作製したゲル膜が光感応性を示すことを見いだし、この光感応性利用してゲル膜の新しい微細加工プロセスを開発している。本研究では、高感度、高解像度の光感応性ゲル膜を創出するとともに、高性能光機能デバイスの開発を目指して研究を行い、以下の成果を得た。 1)新しい化学修飾剤を用いた光感応性ZrO_2膜の作製とパターニング いくつかのβ-ジケトンおよび水酸基置換芳香族ケトンを化学修飾剤に用いてZrO_2ゲル膜を作製し、作製したすべてのゲル膜が光感応性を有することがわかった。また、マスクを通した紫外線照射によるパターニングを行つた結果、1μm程度の微細パタ-ンを作製できることがわかった。 2)光感応性Nb_2O_5ゲル膜の作製とパターニング Zr-、Ti-、A1-アルコキシドだけでなく、Nb-アルコキシドにおいても、ベンゾイルアセトンを加えて還流することによって、光感応性ゲル膜が得られることを見いだした。 3)ZrO_2-SiO_2二成分系ゲル膜のパターニング ベンゾイルアセトンで化学修飾したZr-アルコキシドと部分加水分解したSi-アルコキシドから生成するZrO_2-SiO_2二成分系ゲル膜の光感応性を検討し、光感応性を示すZrO_2ゲルを25mol%しか含まないゲル膜においても微細パターニング可能であることを明らかにした。 4)選択着色コーテイング マスクを通して紫外線を照射した光感応性ゲル膜上に、色素を含むSiO_2ゲル膜を形成したのち、水でリンスを行うと、ZrO_2ゲル膜の紫外線未照射部分にのみ色素を含むSiO_2ゲル膜が残り、選択的に着色させることができた。 5)化学修飾した金属アルコキシドの光吸収と電子状態 様々な置換基を有するβ-ジケトンで安定化したチタンアルコキシドについて、DV-Xα分子軌道法を用いて計算を行った結果、光を吸収したときに電子が主に遷移すると思われるLUMO付近の軌道は、キレート環内のC-Oに関する反結合性の軌道であることがわかつた。
|