研究概要 |
環境保全ならびに作業安全性に対して特段の配慮を加えた有機反応プロセスの開発は重要な研究課題であり、とくに媒質を有機溶媒から水に替えることを前提とした既存反応の見直しが近年活発に進められている。本研究では、水系で機能しうる新しい酸化剤として両親媒性ヒドロペルオキシドを創出し、そのミセル水溶液系での種々の有機基質酸化反応の検討を通して、その適用範囲や反応特異性などを明らかにすることを目的としている。今年度に関する研究成果の概要は以下の通りである。 1.α-アルコキシアルキルヒドロペルオキシド(α-AHP)類の合成: 種々のオリゴエチレングリコール類あるいはそのモノアルキルエーテル類存在下でα-オレフィンをオゾン化することにより、標記化合物群を合成した。それらの基本的な界面化学的特性(水溶性、ミセル形成能など)を明らかにした。 2.α-AHPミセル系での有機基質の酸化反応の検討: まず、α-AHP単独ミセル水溶液系での硫化ベンジル基質の酸化反応を通して、α-AHPが確かに酸化剤ならびに水への基質可溶化剤として機能することを明らかにした。次に、(1)ミセルの有機基質の可溶化能力と反応転化率の関係、(2)レドックス金属(Co,Mn,V,Mo,Wなど)錯体助剤の添加効果、(3)最適反応条件(温度、時間、pH、基質およびミセル濃度)、(4)反応進行に伴うα-AHPの履歴、を明らかにした。
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