研究概要 |
1,3-二置換アレン化合物は軸不斉を有し,その光学活性体には抗菌作用や酵素阻害作用などの生理作用を有するものが多く,農薬あるいは医薬品としての利用も期待されている.また,アレン化合物は合成中間体としても重要であり,特に軸不斉を活かした不斉反応への展開が期待されている.しかしながら光学活性アレン化合物の一般的な合成法は,等量かあるいはそれ以上の光学活性化合物を用いる方法に限られており,触媒量の光学活性化合物を用いる効率の良い合成法の開発が望まれている.本研究の目的はラセミ体あるいはアキラルな基質を原料として,触媒量の光学活性化合物を用いて,種々の官能基を有する光学活性アレン化合物を効率よく合成する一般的手法を開発することである.本年度は初年度および第2年度にその端緒を見出している光学活性パラジウム錯体触媒による2,3-ジエニルホスフェートの触媒的不斉求核付加反応について,その一般性と選択性の向上を目指して研究を行った. 本不斉求核付加反応において,さらに高い不斉選択性の発現を目的として光学活性座ホスフィン配位子の探索を行い,メチレンジオキシ基を有するビフェニルを基本骨格とするパーアリール二座ホスフィンを配位子として用いると,99%以上の高い選択性で相当するアレン化合物を与えることを見出した. 本不斉求核付加反応において求核剤の一般性を検討し,各種第1級および第2級アミン, N-一置換およびN,N-二置換アミドなどの窒素求核剤を用いる不斉アミノ化反応への展開に成功した.本反応によりラセミ体の2,3-ジエニルホスフェートから一段階の反応で光学活性2,3-ジエニルアミンを高い光学純度で合成することができる.
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