研究概要 |
ジルコナサイクルはNCSやNBS、I_2などのハロゲン化試薬と反応させるとジルコニウム-炭素結合が選択的に開裂する。われわれはこのハロゲン化の次に、もう1つのジルコニウム-炭素結合を親電子剤である塩化トリアルキルスズと反応させるとジエニルスズ化合物が得られるのではないかと考えた。残念ながらこの反応は進行しなかったが、さらに考慮を加えスズ化合物を加えた後、塩化銅を加えることで望む反応が進行することを見出した。すなわち、はじめにテトラエチルジルコナシクロペンタジエンにNCSを加えて塩素化し、銅塩存在下クロロトリブチルスズを反応させると77%で生成物を与えた。同様にして、4-ブロモ-1-スタニルブタジエン誘導体もそれぞれ70%、75%の単離収率で得られた。 アルキル、アリール基で置換された非対称ジルコナシクロペンタジエンは置換基選択的ハロゲン化が可能であることを見出した。通常、はじめのクロロ化、ブロモ化はアルキル基の置換したsp^2炭素で起こるのに対し、アリール基の置換したsp^2炭素もしくはアリール基の一部であるsp^2炭素は、NCSやNBSなどとは反応しない。このときにヨウ素を用いるとモノヨウ素化体は得られず、ジヨウソ化体が生成する。ジルコニウム-ベンザイン錯体とアルキンから調製できるジルコナインデンは67%という高収率、高選択性で生成物を与えた。 テトラフェニルジルコナシクロペンタジエンが用いられたときは、ジエニルモノスズ化合物と1,4-ジスタナブタジエンを反応条件を変えることで、それぞれ55%、46%と作りわけることが可能であった。同じ操作でテトラエチル置換ジスタニルブタジエンを46%で得ることができた。また量論量もしくは触媒量の塩化銅存在下、R_2SnCl_2とジルコナシクロペンタジェンとの反応で多くのスタナシクロペンタジエンが高収率で得られた。
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