研究概要 |
本研究は新しい導電性化合物の合成を目指して、フェロセン化合物を結合させた場合の物性の変化に注目して新化合物の合成を検討した。フェロセンは有機金属化合物であり、中心に鉄原子を有していて、電子を移動させやすい性質を持っていることが知られており、電気化学の分野では注目されている化合物である。多くの有機導電性化合物が電子のドナーとアクセプターになる分子を組み合わせたものが多く、本研究では、まずTTF(テトラチアフルバレン)構造がフェロセン環と結合したタイプの新しいドナー化合物を合成した。これらのUV-Visスペクトルより長波長シフトと強度の増加がみられ、CVスペクトルよりは3電子還元が同時に起こることがわかった。また、合成検討の過程で中間化合物として重要な新しいテトラチアフルバレンジメチルエステル(TTF-DME)の合成法を見出して報告している。次に、カルボニル基の一方がフェロセニル基となって、もう一方を水素、メチル基、フェニル基、ヘテロ環(フラン環、チオフェン環等)が結合した化合物類を合成し、そのカルボニルのところにTTFやDTF構造を導入するための反応としてWittig-Hornor反応を用いた。相当するケトン化合物をTHF中-78℃でn-ブチルリチウム存在下に1,3-ベンゾジチアフルバレン-2-ホスホネートエステルと反応することによって目的のフェロセン-ジチアアフルバレン(Fc-DTF's)やフェロセン-テトラチアフルバレン(Fc-TTF's)を合成した。置換基の影響を比較するためにフェロセンやジベンゾテトラチアフルバレンとそれぞれの化合物のUV-VisとCVスペクトルの比較を行い、2電子還元と3電子還元の場合があることがわかった。置換基の影響としてはヘテロ環よりもメチル基のような電子供与性基の方が電子移動が起こりやすいことがわかった。
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