研究概要 |
これまでに、当研究室で見出している2種類のRNA加水分解分子、(Zn^<2+>)_2-L1(1)(L1=N,N,N',N'-tetrakis(2-pyridylmethyl)-1,3-diamino-2-propanol、および、(Zn^<2+>)_2-L2(2)(L2=N,N,N',N'-tetrakis(2-pyridylmethyl)-1,3-bis(aminomethyl)benzeneについて、二金属中心の役割を、詳しく検討した。1と2は、亜鉛(II)周囲の環境がほぼ同じで、中央の架橋部分だけが異なる。様々な条件での、RNA(2量体)加水分解反応を比較した結果、1を用いた場合と、2を用いた場合では、加水分解反応速度の基質核酸塩基に対する依存性、3'-NMPと2'-NMPの生成比、および、反応速度のpH依存性に重大な差異が見られた。これらの、1、2の違いを明らかにするため、電位差滴定を行い、溶液内構造を検討した。その結果、1では、OH^-が二個の亜鉛(II)を架橋した構造が触媒として作用するのに対し、一方、2では、二個の亜鉛(II)上に、各々、配位水が存在し、一方はH_2O、他方はOH^-である場合に、触媒として作用することが明らかとなった。すなわち、2では、二個の亜鉛が異なる機能(酸と塩基)を分担し、そのために上述の加水分解触媒としての特性が現れることが明らかとなった。 さらに、2の基本骨格を持ち、二個の亜鉛(II)の環境が異なる非対称型分子、(Zn^<2+>)_2-L3(3)(L3=N-(2-aminoethyl)-N,N',N'-tris(2-pyridylmethyl)-1,3-bis(aminomethyl)benzene)および(Zn^<2+>)_2-L4(4)(L4=N-(2-hydroxyethyl)-N,N',N'-tris(2-pyridylmethyl)-1,3-bis(aminomethyl)benzene)、を新たに合成し、検討した。L3およびL4、ともに、水溶液中で二核亜鉛(II)構造を安定に形成することができ、RNA加水分解触媒としても、ユニークな特性を示すことが明らかとなった。
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