研究概要 |
二つのベンゼン環が架橋鎖で結ばれたシクロファンに関する研究はこれまでに数多くなされている。しかし、そのほとんどは二つのベンゼン環が共にパラ位で結ばれたパラシクロファンか、二つのベンゼン環が共にメタ位で結ばれたメタシクロファンで、一方のベンゼン環がパラ位、他方のベンゼン環がオルト位で結ばれたオルトパラシクロファンについての研究例は少ない。今回、2-ブロモ-1,4-ビス(ブロモメチル)ベンゼンと1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼンあるいは1,2-ビス(メルカプトプロピル)ベンゼンとの縮合反応により得られるジスルフィドを酸化してジスルフォン体とした後、熱分解反応を行うことにより、5-ブロモ[3.3]オルトパラシクロファンおよび6-ブロモ[4.4]オルトパラシクロファンを合成した。さらに、5-ブロモ[3.3]オルトパラシクロファンから、5-ヒドロキシメチル[3.3]オルトパラシクロファン、5-ホルミル[3.3]オルトパラシクロファン、および5-ヒドロキシカルボニル[3.3]オルトパラシクロファンへ誘導した。5-ヒドロキシカルボニル[3.3]オルトパラシクロファンおよび6-ブロモ[4.4]オルトパラシクロファンについてX線結晶構造解析を行ったところ、5-ヒドロキシカルボニル[3.3]オルトパラシクロファンでは二つのベンゼン環がほぼ平行の構造を取っているのに対し、6-ブロモ[4.4]オルトパラシクロファンでは二つのベンゼン環の角度が約60度であることが分かった。5-置換[3.3]オルトパラシクロファンおよび6-置換[4.4]オルトパラシクロファンには面性不斉が発生し、光学異性体が存在する。現在それらの光学分割を試みている。光学活性体が得られたのち種々の誘導を行い、平成13年度に高選択的な不斉触媒の開発を行う予定である。
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