研究概要 |
本研究では、これまで困難とされてきたトリフルオロメチル基近傍における求核置換反応を、分子内的な求核置換3員環形成反応にすることにより成功した。これを鍵反応として、光学活性な含フッ素アミノ酸、アミノアルコールを合成した。 窒素求核剤による分子内的な求核置換によりアジリジンを合成できた。このアジリジンの開環により種々の光学活性なβ,β,β-トリフルオロアミンを合成できる。さらに窒素求核剤による5員環形成反応について検討したところ、3員環形成反応と同程度の収率で目的物を得た。 シアノ基により安定化したカルバニオンによる分子内的な求核置換によりトリフルオロメチルシクロプロパンを合成した。動的な反応の立体制御により、生成物の立体配座はトリフルオロメチル基の結合している炭素上で反転し、高いジアステレオ選択性で反応は進行した。このジアステレオ選択性は計算化学的手法により説明された。すなわち、基質の置換基効果を詳細に検討したところ、ジアステレオ選択性の根源が静電反発であることが示された。これらの生成物より光学活性な含フッ素シクロプロパン・アミノ酸の合成に成功した。 これらの反応等で得られた3員環化合物を開環して得られた光学活性なアミノアルコールの利用として、不斉配位子としての能力を検討した。ジアルキル亜鉛によるアルデヒドのアルキル化反応において、他の配位子に見られない濃度依存性を有していた。 また、本研究により得られたエポキシド、アジリジンの2位(トリフルオロメチル基の結合している位置)をアニオン化し、求電子剤と反応させることに成功した。特にアジリジンからはα-トリフルオロメチルアミノ酸の汎用合成中間体を得た。
|