研究概要 |
二種類の配位性ユニットを持つY-P-Y型配位子において二つのYの内一方を選択的に金属に配位させることができれば、リンを不斉中心とすることが可能となり、反応点に近い場所に効率的不斉場が構築可能となる。さらに残った配位性ユニットYは基質や反応試薬との相互作用が可能であり、不斉反応に際しての多点制御により高い不斉誘導を達成することが期待される。N-P-N型配位子として光学活性2-置換オキサゾリンユニットを持つ不斉ビスオキサゾリルホスフィン配位子((S,S)-R-P(Ox-R')_2)(R=Ph,^iPr;R'=Me,^iPr,^tBu)を種々合成し、Pd,Pt,Rh,Ni,Ru等への選択的配位の有無を^<31>P-NMR及び^1H-NMRで検討した。平面正方型の錯体を形成する金属では生成するジアステレオメリックな錯体の一方への著しく大きな偏りが認められ、二つのNの一方が金属へ選択的配位をすることが結論された。この選択的配位はビスオキサゾリルホスフィン配位子が配位したπ-アリルパラジウム錯体[Pd(C_3H_5)-((S,S)-PhP(Ox-^iPr)_2]PF_6のX線構造解析でも確かめられた。 ビスオキサゾリルホスフィン配位子を有するパラジウム錯体を用いたエナンチオ場選択不斉アリルアルキル化反応では90%ee以上の不斉選択性が得られ、特に立体要因の小さな1,3-ジメチルアリル中間体への求核反応においても94%eeとこれまでにない高い選択性が達成され、リン不斉場の有効性が示された。また不斉アリルアミノ化でも85〜90%eeの高い不斉選択性が得られ不斉場の有効性が示された。さらにアリル化合物へのアルキル亜鉛化合物の反応においてはフリーのオキサゾリンユニットの寄与があり、多点認識系となることが認められた。
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