研究概要 |
本研究では、求核剤としてアミンを用いπ-アリルイリジウム中間体との反応による触媒的炭素-窒素結合生成反応の確立を目的として行った。アリルエステルが酸化的付加して生じるπ-アリル中間体とアミンとの反応によってアリルアミンが得られる。本反応はアリル位アミノ化反応として知られ、アリルアミンの触媒的合成法として有機合成に広く用いられている。パラジウム錯体触媒を用いる場合、linear体のアリルアミンが得られる。これまでに高選択的にbranch体のアリルアミンが得られる触媒系は、報告されていない。 Methyl(E)-3-phenyl-2-propenyl carbonateとpiperidineの反応を触媒量の[Ir(cod)Cl]_2/4P(OPh)_3存在下で種々の溶媒を用いて行った。生成物の収率及び選択率は用いる溶媒の影響を大きくうけた。エタノール溶媒中の反応では、収率95%で生成物が得られ、branch体の選択率は95%であった。パラジウム錯体触媒によるアリル位アミノ化反応において一般的に用いられるTHF溶媒中の反応では、収率25%で生成物が得られ、branch体の選択率は89%であった。E_T(30)が40以上の溶媒を用いると高収率で生成物が得られた。本アリル位アミノ化反応が、branch選択的であり極性溶媒中で促進されることがわかった。 溶媒としてエタノールを用いて種々のアミンの反応を行った。Pyrrolidine, morpholine, cyclopentylamine, n-butylamine, benzylamineを用いて反応を行うとbranch体のアリルアミンが高選択的に得られた(選択率92-96%)。Diethylamine, t-butylamineなどの立体的に嵩高いアミンを用いるとbranch体のアリルアミンの選択率は低下した(選択率81-65%)。 このように極性溶媒中でのイリジウム錯体触媒によるアリル位アミノ化反応によって初めてbranch選択的アリル位アミノ化反応が実現された。
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