研究概要 |
我々はこれまでベンゾジシラシクロブテン類のニッケル、パラジウム、および白金錯体触媒存在下での反応を行い、生成する化合物の構造は触媒として用いた金属の種類に大きく依存することを報告した。本年度は、シスおよびトランス-3,4-ベンゾ-1,2-ジ(t-ブチル)-1,2-ジメチル-1,2-ジシラシクロブト-3-エンを合成し、そのシス体およびトランス体を分離することに成功した。分離したシス体およびトランス体をパラジウム錯体触媒存在下、アセチレン類との反応を行い、ベンゾジシラシクロブテンの立体化学について検討した。触媒量のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体存在下、シス-3,4-ベンゾ-1,2-ジ(t-ブチル)-1,2-ジメチル-1,2-ジシラシクロブト-3-エン(1a)とフェニルアセチレンとの反応を200℃、24時間の条件で行うと、シス-5,6-ベンゾ-1,4-ジ(t-ブチル)-1,4-ジメチル-2-フェニル-1,4-ジシラシクロヘキサ-2,5-ジエン(2a)が84%の収率で得られた。同条件下、トランス-3,4-ベンゾ-1,2-ジ(t-ブチル)-1,2-ジメチル-1,2-ジシラシクロブト-3-エン(1b)とフェニルアセチレンの反応を行うと、トランス体の付加物(2b)が唯一の揮発性生成物として収率良く得られた。また、化合物1aおよび1bを同条件下、1-ヘキシンやt-ブチルアセチレンと反応させると、立体特異的にそれぞれの付加物を高収率で与えることを明らかにした。 また、1,2-ジメチル-1,2-ジフェニル-1,2-ジシラシクロペンタンの合成を行い、シス体(3a)およびトランス体(3b)を蒸留により分離した。3aおよび3bをテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体触媒存在下、アセチレン類との反応を行うと、立体特異的に反応が進行し、各々の付加物を与えることを明らかにした。
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