研究概要 |
ロジウム錯体を触媒とする各種アルケンのヒドロホルミル化では,位置,および立体選択性が概して乏しい点を改善し,有機合成上の潜在的な有用性を開拓すること,およびアルケン基質の高度にジアステレオ選択的なヒドロホルミル化の実現を研究の目的とし,つぎの成果を得た. 1)キラルな1,1-二置換アルケンのジアステレオ選択的ヒドロホルミル化の高度化を念頭に基本的な基質である4-t-Butylmethylenecyclohexaneのヒドロホルミル化を詳細に検討した.Rh(CO)_2(acac)を触媒前駆体とした反応で,CO-H_2初圧が生成物trans-/cis-4-t-Butylcyclohexylacetaldehydeの選択性に著しい効果をおよぼし,高圧下では速度支配による生成物組成となり,一方,低圧下では熱力学支配により,trans/cis=92:8となることを明らかにした.ただし,低圧下では,基質が著しく内部アルケンに異性化するので,これを抑制する為にはRu_3(CO)_<12>を共触媒として加えるとよいことを見出した. 2)Rh(CO)_2(acac)/Ru_3(CO)_<12>/Xantophos触媒系でオクテン異性体混合物からヒドロホルミル化をCO-H_2初圧2気圧,100℃で進行させ,ノナナールを選択的に得ることが可能となった. 3)ヒドロホルミル化とヒドロシリル化の融合という観点から,Zwitter ion錯体[Rh(cod)][BPh_4]を触媒前駆体とする各種1-アルキン類のシリルホルミル化を検討した.イオン性液体[Bmim][PF_6](1)を反応媒体として用いると,シリルホルミル化を完全な2相系触媒反応として進行させることができ,生成物3-シリル-2-置換-2-プロペナールの分離はデカンテーションで済み,かつ,1に含まれるロジウム触媒系を安定に,極めて効率よくリサイクル使用できることを示した.
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