研究概要 |
キラルな1,1-二置換アルケンのジアステレオ選択的ヒドロホルミル化の高度化を念頭に,基本的な基質である4-t-Butylmethylenecyclohexaneのヒドロホルミル化の反応条件検討を完了した.ホスフィン支持配位子の有無とCO-H_2合成ガスの初圧が,対応するtrans-,cis-4-t-Butylcydohexyl-acetaldehyde生成の選択性に多大な影響を与えることを見出し,低圧下ほどトランス生成比が高くなることを明らかにした.ついで,ヒドロホルミル化と関連の深い反応として,アルキンのロジウム触媒シリルホルミル化をとりあげ,無溶媒で和系触媒反応条件を構成することが可能な,イミダゾリウム系イオン性液体,1-Butyl-3-methylimidazolium hexafluorophosphate,[Bmim][PF_6],を反応媒体とする,新規なシリルホルミル化を開発することができた.この反応の眼目は,触媒を含む[Bmim][PF_6]層が容易に生成物と分離でき,触媒のリサイクルを可能とすることにある. さらに,触媒系として用いてきたRh(acac)(CO)_2にRu_3(CO)_<12>を共触媒を加えると,上述の4-t-Butylmethylenecyclohexaneの低圧合成ガス下におけるヒドロホルミル化では避けがたい,基質の内部アルケンへの異性化が顕著に抑制されアルデヒドへの変化率を向上させ得ることを見出した.そこで,この触媒系を用いて,一般の鎖状アルケン異性体混合物を基質としてヒドロホルミル化を行えば,専らアルケンの末端でヒドロホルミル化を進行させる可能性がある.これは工業的に意義深い知見である.すなわち,安価なアルケン異性体混合物を原料に,製品価値の高い1-アルカナール合成のルートとなりうる可能性がある.予備的な実験では,オクテン類を基質として行い,ロジウム触媒・に直鎖/分岐選択性の高い座ホスフイン配位子(たとえばXANTPHOS)を過剰に用いることで,この異性化-ヒドロホルミル化を達成する反応条件の端緒を見出した.
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