本研究は、新規なジニトロンモノマーの合成を行い、その特異な反応性を利用して新規な複素環含有高分子材料を合成しようとしたものである。ニトロン類は1、3-双極子構造を有していることから、オレフィン類などのジポーラロフィルと容易に環化付加し複素環構造を形成する。この反応を利用した天然化合物の化学合成は種々検討されているが、この反応を重合反応に応用した例は少ない。そこで本研究では、数種の新規なジニトロンモノマーを合成し、ジポーラロフィルとしてジイソシアネートやビスマレイミド及びジエン類を用い1、3-双極環化重付加反応による新規高分子材料の検討を行った。その結果、ジニトロン類とジイソシアネート類またはジエン類との環化重付加反応では、数平均分子量数千程度の分子量を持つ複素環構造を有する新規ポリマーが得られ、また、ジニトロン類とビスマレイミド類の環化重付加反応では数平均分子量数万の分子量を持つイソオキサジリジン構造を有する新規ポリマーが得られることを明らかとした。また、ここで得られた新規ポリマーは、極性溶媒に良く溶解し、フィルムやシートへの加工が可能であることがわかった。さらにはこれらポリマーの熱特性の検討から、ビスニトロンとジイソシアネートの環化重付加より得られたポリマーは約200℃で脱炭酸反応が起き、ポリイミンヘ変換できることを見出し、また、ビスニトロンとビスマレイミドの環化重付加より得られたポリマーは、材料としての十分な耐熱性を有していることが明らかになった。この反応により生成するポリイミンは導電性高分子への応用も期待でき今後の展開が期待される。
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