トリペプチドとしてPro-Pro-Gluを含む両親媒性分子はProが水素結合のプロトンドナーを欠くため、Phe-Phe-Gluなどのトリペプチドを含む両親媒性分子と混合した場合、水素結合連鎖を停止する機能を有するはずである。研究計画に従い、本年度はPro-Pro-Gluを含む両親媒性分子を合成した。トリペプチドとしてPhe-Phe-Gluを含む両親媒性分子と混合したところゲル形成が阻害され、予想した効果を確認した。この結果はデジタルカメラを用いて記録した。一方、ゲル形成阻害のフーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルによる定量的評価においては、問題点が生じた。Pro-Glu結合にはGlu由来のプロトンが存在するため、このプロトンに起因する水素結合の影響でゲル崩壊とスペクトル変化が連動しない。そこで、現在Pro-Pro-Proを有する一鎖型両親媒性分子を合成している。この分子はいっさいのプロトンドナーを含まない。なお、ゲル崩壊の研究と平行して、より詳細なゲルの構造解析も検討してきたが、その結果、ペプチド型両親媒性分子が有機溶媒中で作る会合体は、リオトロピック液晶で、安定な水素結合の形成とアルキル鎖の安定パッキングが拮抗する結果生ずるものであるなど、今後、ゲル崩壊を研究していく上での新しい知見を得ることができた。これらの結果は、一部を論文として公表するとともに(次頁)、平成13年秋の学会において発表予定である。
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