研究概要 |
導電性高分子であるポリアニリン(PAn)は、その難溶解性に起因する低重合度と分子中の折れ曲がりや枝分かれ構造の発生によって電導性が大きく低下する。本研究は、種々のポリアニオン性テンプレートを介在させた光酸化重合によって、直線性が高く、かつ、溶解性のよいPAn/テンプレート複合体が得られることをを明らかにした。すなわち、テンプレートとして水溶性ヘクトライトクレイを用い、モノマーとしてアニリン量体(N-phenyl-p-phenylene-diamine, PPD)、光触媒としてルテニウムトリスビピリジル錯体Ru(bpy)_3^<2+>を用いた光酸化二重合において、テンプレート上での励起Ru(bpy)_3^<2+>、PPD間の電子移動、その後の重合反応を、モノマーならびに光触媒とテンプレートとの相互作用から明らかにし、クレイ層間における長共役長のPAnの生成とその酸ドープ状態の安定化を明らかにした。テンプレートをフレキシブルなポリビニル硫酸カリウムに代えた場合、重合条件によって得られた複合体が水あるいは有機溶媒に可溶となること、ドデシル硫酸ナトリウムミセルの場合は二次元に規制された界面あるいは層間において共役長の長いPAnが生成すること、また、剛直な棒状構造を有するDNAを用いた場合、高pHにおいても酸ドープ状態を保つ複合体が得られるなど、テンプレートによって異なる構造、特性の複合体が得られることも明らかにした。また、これら複合体の電気物性を個々に評価し、電子材料やEl素子として有用であることを明らかにした。更に、パーフルオロスルホン酸系ポリアニオン膜をマトリックスとして用いた場合、膜中でのPAn生成による像形成が可能であることを示した。
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