研究概要 |
1.研究目的 本研究は、可逆的な構造変換機能を有する化合物(1.構造ゲスト)、触媒機能を有する化合物(2.活性ゲスト)およびこれら機能性化合物を包接するホスト化合物(3.ホスト)からなる複合体を合成し、自己応答性(インテリジェント)触媒の合成を試みる。 2.研究成果 今年度は層状構造を有する粘土鉱物層間サイズを可逆的に変化させ、且つ、触媒機能を有する金属錯体(STL錯体)を合成し、これをスメクタイト系粘土鉱物層間にインターかレーションさせた種々の層間サイズを持つ層間固定化Rh(I)錯体を創製した。これた層間固定化錯体を触媒として用いてジエンの水素化反応を行い、層間サイズの変化による反応速度の制御を行った。以下に明らかになった詳細を示す。 (1)層構造を可逆的に変化させる構造チューニングゲスト機能を有する配位子(STL)の合成-4-alkylpyridine(C_npy)の合成(n=1,5) (2)STLを配位させたRh(I)錯体(STL錯体)の合成-[Rh(COD)(C_n-py)_2]ClO_4(n=1,5)の合成 (3)[Rh(COD)(C_n-py)_2]^+(Rh-C_npy)のナトリウムへクトライト(NaHT)およびリチウムテニオライト(LiTN)へのインターカレーション-Rh-C_npyの分子サイズに依存してクリアランススペース(C.S.)は拡大した.すなわち、NaHTでは0.94nm(C_1)→1.13nm(C_5)、LiTNでは1.01nm(C_1)→1.24nm(C_5)となり、アルキル配位子の構造チューニング機能が明確に発揮された。(4)Rh-C_npy/NaHT Rh-C_npy/LiTNによる触媒作用と層間サイズとの相間性-ジエン(linalool、limonene)の水素化反応を行った。均一系錯体(Rh-C_npy)では構造チューニング配位子(STL)のサイズに関わらず活性には著しい変化は見られなかったが、層間固定化したRh-C_npy/NaHT Rh-C_npy/LiTNでは大きな活性の変化が見られた。すなわち、C_1サイズのSTLにおいては活性が劇的に減少したが、C_5サイズのSTLではC_1に比べC.S.が約0.2nm拡大したことにより活性はC_1と比較して顕著に増大(約100倍)した。この現象はホストを変えても同様の傾向を示し、層間隔に応じた反応基質のサイズ認識が明確に発揮された。 次年度は、この層間に熱応答するゲルを固定化して外的刺激に応答してそのホスト構造を可逆的に変化させ、触媒活性を制御する自己応答性触媒の創製を試みる。
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