研究概要 |
チオケテンの反応性を利用した新規な含イオウ高分子の合成法を確立し、得られる含イオウ高分子の構造と性質を調べることにより有用な高分子材料の開拓を行うことを目的として研究を行ってきた。そこで、本重合法の適用範囲の拡張と、得られたジチアフルベン構造を持つ新規π共役高分子の性質を詳細に検討することを目的とし、平成12年度は様々な芳香族ジインモノマーを用いて主鎖中にジチアフルベン構造を有するπ共役高分子を種々合成し、その特性解析を行った。以下にその成果を示す。 各種ヘテロ芳香族チオケテンの環化付加重合を行ったところ、すべての場合で対応するπ共役ポリ(ジチアフルベン)が良好な収率で得られた。得られたポリマーはすべてDMSQ DMFに可溶であった。紫外可視吸収スペクトルにより、いずれも1,4-ジエチニルベンゼンから得られる以前のポリマーよりも長波長側に吸収極大を示し、π共役系が効果的に拡張していることを示した。これらの結果は、チオフェンなどの五員環芳香族はベンゼン環に比べて共鳴安定化エネルギーが低いためキノイド構造をとりやすくπ電子の非局在化がより達成しやすいため、共役系が拡張したと考えられる。また、電子供与性ユニットと電子受容性ユニットが交互に連なった共役高分子は分子内で電荷移動構造を示すことにより、共役系の拡張が期待できることから、ピリジン骨格は電子不足系芳香族であるため、分子内で電荷移動により共役系が拡張したと考えられる。さらにピリジン骨格を導入したポリマーでは未ドープ状態における電導度が半導体レベルの値を示した。分子内での電荷移動によるものであると考えられた。
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