官能基を含む高分子を、その構造と分子量を精密に制御して人工的に合成することを目的し、一酸化炭素や二酸化炭素などの安価で入手容易なC1資源を活用し、高分子への官能基導入をはかった。特に、(i)オレフイン類と一酸化炭素の不斉共重合(ii)メゾエポキシドと一酸化炭素の不斉共重合の二つの反応に注目し、以下の成果を挙げた。 (i)オレフィン類と一酸化炭素の不斉共重合 キラルホスフィンホスファイト配位子 BINAPHOSのPd(II)錯体を用い、官能基を分子内にもつオレフィン類と一酸化炭素の不斉交互共重合に成功した。この反応により、側鎖にペルフルオロアルキル基を導入し、撥水材料としての利用の可能性を示した。また、側鎖に液晶性のメソゲン基を導入し、側鎖型液晶高分子を合成した。主鎖がイソタクチックな場合には、主鎖中の不斉炭素に誘起されてキラルネマチック相の形成が見られた。 (ii)メゾエポキシドと二酸化炭素の不斉共重合 光学活性アミノアルコールの亜鉛錯体を触媒とするシクロヘキセンオキシドと二酸化炭素を交互共重合させた。反応はエナンチオ選択的に進行し、初めての不斉交互共重合が達成された。交互共重合体はアルカリ条件下加熱により加水分解でき、鏡像体過剰率70%が正確に求まった。さらに、触媒の亜鉛複核錯体の構造を明確にし、触媒作用を明らかにするとともに鏡像体過剰率を最終的に80%まで向上できた。
|