研究概要 |
生分解性脂肪族ポリエステルの機械的及び熱的性質を改良するため、剛直な環状構造を有するdimethyl 3,6-diketopiperazine-2,5-diacetate(c-D_2-OMe)をアスパラギン酸を出発物質として3段階の反応により12%の全収率で合成した。続いて、c-D_2-OMe(1-30mol%)とdimethyl succinateを1,4-butanediolと反応させ、重縮合によるpoly(butylenesuccinate)(PBS)への導入を行った。重縮合は1wt%のzinc acetate・dihydrideを触媒として用い、常圧下145℃、その後減圧下180℃で行った。得られた共重合体は重量平均分子量1万から10万程度で、c-D_2含有量が増すにつれて溶解性が減少し、14%を超えたものはクロロフォルム不溶でHFIP可溶、20%を超えるとHFIPにも不溶であった。共重合体はPBSに比べて熱安定性に顕著な改善が見られた。 c-D_2含有量7%のサンプルをホットプレスによりフィルム化し、それを用いて酵素分解及び引張試験を行った。Lipase PSを用いた酵素分解では(リン酸緩衝液中50℃、〜2週間)、PBSよりも遅いものの生分解性を有していることが判明した。残存ポリマーの分子量減少はPBSよりも著しく、c-D_2ユニットを導入によりポリマーの親水性が向上し、水分子が内部に進入しやすくなったため、非酵素的な加水分解が進みやすくなったものと考えられる。引張試験の結果ではPBSと比べて強度及び伸度は増大し、同時に弾性率の低下が見られた。
|