研究概要 |
ジペプチド環を含むアスパラギン酸環状2量体(dimethyl 3,6-diketopiperazine-2,5-diacetate(DDK))を合成し、これと1,4-ブタンジオール、テトラエチレングリコールをジオール成分として用いる重縮合を行った。DDKはアスパラギンより3段階、12%の全収率で合成された。テトラエチレングリコールとの重合では塊状重合によって、diketopiperazine環を含むポリエステルの合成に成功した。最適な条件下ではMn36000程度のポリマーが合成できた。このポリエステルは非晶性で200℃付近に熱分解開始温度を有していた。このポリエステルは低分子量のものはクロロホルム等の有機溶媒に可溶であったが、高分子量のものは強酸にのみ可溶であった。 つづいてDDK(1-30mol%)とdimethyl succinateを1,4-butanediolと反応させ、重縮合によりpoly(butylene succinate)(PBS)への生分解可能な環構造の導入を行った。重縮合は1wt%のzinc acetate・dihydrateを触媒として用い、常圧下145℃、その後減圧下180℃で行った。得られた共重合体のMwは1万から10万程度で、DDK含有量が増すにつれて溶解性が減少した。共重合体はPBSに比べて熱安定性に顕著な改善が見られた。 DDK含有量6.8%のサンプルをホットプレスによりフィルム化し、酵素分解及び引張試験を行った。Lipase PSを用いた酵素分解はPBSよりも遅いものの生分解性を有していることが判明した。残存ポリマーの分子量減少はPBSよりも著しく、DDKユニットを導入によりポリマーの親水性が向上し、非酵素的な加水分解が進みやすくなったものと考えられる。引張試験の結果ではPBSと比べて強度及び伸度は増大し、同時に弾性率の低下が見られた。
|