ポルフィリンの集合構造は生体中で優れた機能を示す。これの構造と機能の相関を求め、人工的に利用することは意味深い。本研究ではポリペプチドのβシ-ト構造を利用し、ポルフィリンを含む両親媒性集合構造の構築を試みた。 ポリペプチドAcCysLysValLysValNH_2、AcCysLysValSerValLysValNH_2を固相合成した。これにp-、o-ブロモアセトアミドフェニルトリトリルポルフィリンを反応させ、βシートペプチドを結合させたポルフィリンを得た。 pH9緩衝液20%TFE中、両親媒性ポリペプチドはランダム構造をとっていたが、ペプチドを結合させたポルフィリンのペプチドはβ構造であり、これらの化合物が溶液中で集合していることが示された。これらの化合物のUV吸収は複数あり、溶液中で徐々に集合していくと考えられる。CDスペクトルでも大きな複数のCotton効果が現れ、二つ以上のポルフィリンが励起子相互作用をしている。ポリペプチドがβシート構造を形成した場合、多数のペプチド鎖が配列すると解釈される。分子モデルによると、ペンタペプチドを結合したポルフィリンでは隣り合ったポルフィリン同士が最も近接する。これに対しヘプタペプチドを結合した場合、一つのペプチド鎖を挟んだポルフィリン同士が近接する。 D_2O-CD_3OD(7:3)中ペプチドを結合したポルフィリンのポルフィリン部分の1H NMRシグナルはまったく観測されない。D_2O含量を下げるとシグナルは観測されるが、広幅化しており強度も小さい。検討の結果、ポルフィリンの水素の広幅化、強度低下(消失)は分子集合にともない、水素の緩和時間(T2)が短くなっており、このことが異常なNMR挙動の原因であると判明した。
|