多糖をはじめとする循環再生可能な生物資源が見直されるにつれ、それらの繰り返し単位である単糖やアミノ酸からの高分子合成研究が注目されている。本研究では、糖とアミノ酸を出発原料とする新規ポリウレタンおよびポリウレタンウレアの創製し、分子構造による加水分解性の制御を目指す。まずD-グルクロン酸の還元性末端を還元して得られるL-グロン酸の、2位と3位、および5位と6位の水酸基をイソプロピリデン基で保護したラクトン(1および2)を合成した。これらとL-リジン由来のジイソシアナートとの重付加を行い、ラクトン環を側鎖および主鎖に含むポリウレタン(3および4)を得た。得られたポリウレタンをトリフルオロ酢酸-水混合溶媒中で脱保護することにより、ラクトン環と水酸基を併せもつポリウレタン(5および6)に変換した。これらのポリウレタンをpH7および8の緩衝溶液中で加水分解を行い、側鎖にラクトン環をもつポリウレタン(3)の方が主鎖にラクトンをもつポリウレタン(4)より加水分解性が高いこと、水酸基を併せもつポリウレタン(5および6)の方が、もたないポリウレタン(3および4)よりはるかに加水分解性が高いことなどが明らかになった。一方、アミノ酸であるセリンのメチルエステル(7)とL-リジン由来のジイソシアナートとの重付加も同様に行い、対応するポリウレタンウレア(8)を得た。ポリウレタンの場合と同様な条件で加水分解実験を行ったところ、ポリウレタンウレアも加水分解するものの、上記ポリウレタンより加水分解速度が低いことがわかった。いずれにしても本研究で得られたポリウレタンおよびポリウレタンウレアは、出発原料の糖、アミノ酸、および二酸化炭素に分解するので、生体内分解吸収性材料あるいは環境負荷軽減型高分子材料として期待される。また本研究を通じて、ポリウレタンへのラクトン環および水酸基の導入が加水分解性の制御に有効であることが明らかになった。
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