研究課題/領域番号 |
12650874
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山下 那都樹 近畿大学, 理工学部, 教授 (50088407)
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研究分担者 |
石船 学 近畿大学, 理工学部, 助手 (40268462)
柏村 成史 近畿大学, 理工学部, 助教授 (50152632)
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キーワード | 鋳型重合 / 水素結合 / アクリルアミド / ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) / 下部臨界共溶温度 / 分子間相互作用 |
研究概要 |
鋳型ポリマーとしてポリメタクリル酸メチル存在下、アクリルアミドの重合の重合について経時変化を追跡したところ、添加率10%以下の重合初期においては、鋳型高分子と生成高分子との間に、重合度およびタクティシティーの相関が確認できたが、重合の進行にともない、鋳型効果が不明瞭となった。鋳型高分子の添加量を変化させてもこの傾向に変化はみられず、鋳型高分子の相互作用点濃度というよりはむしろ、鋳型高分子-生成高分子の相互作用の強度に原因があるものと考えられた。そこで、この相互作用性に変化を与えるという観点からも、重合溶媒の効果を検討したところ、プロトン性極性溶媒を含む混合溶媒中でも重合は進行するものの、重合性は低下し、鋳型効果もほとんど見られなくなった。このことから、本重合系は当初の予想通り、鋳型高分子上のカルボニル基とモノマーのアミド基との水素結合に基づく鋳型効果による重合系であることが証明された。また、鋳型高分子の種類を、アミド系高分子であるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)に変化させ、アクリルアミドの重合を行ったところ、すなわち、重合は水中で進行し、しかも、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)がもつ下部臨界共溶温度(LCST)近傍の重合温度において最も高い重合性を示した。水中で、鋳型高分子-モノマー間の水素結合に基づく相互作用が効率よく実現されているとは考えがたく、この系の重合機構は全く異なったものである可能性が高い。現在のところ、LCST付近において、鋳型高分子の形成するマトリックス中に、溶媒分子およびモノマー分子が取り込まれ、その高分子反応場において重合が誘発されているものと予想している。高分子マトリックス中で進行するという点においては、添加する高分子の構造情報が生成高分子に影響することは大いに予想され、広義の意味で、新しい鋳型重合系となりうるのではないかと考えられる。
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