研究の初年度に当たる本年度は、(1)AB2元ブロック共重合体を用いて結晶化挙動・最終高次構造に与える分子特性・結晶化条件の検討と(2)ABA3元ブロック共重合体の合成・精製・分子キャラクタリゼーションを行った。 (1)種々の分子量と組成を持つε-カプロラクトン-ブタジェン2元ブロック共重合体を合成し、結晶化により形成する最終高次構造と分子量、結晶化温度、および、結晶化方法の相関を調べた。これらの因子の調節により、まったく異なる最終高次構造(すなわち、ラメラくり返し構造と内部で部分的に結晶化したミクロ相分離構造)が得られた。この2つの高次構造中では結晶化度等の物性も大きく異なり、力学的性質等に大きな相違が期待できる。また、分子特性・結晶化条件の調節を行うことにより、結晶化が導く最終高次構造制御の可能性も示唆される。 (2)ABA3元ブロック共重合体はAB2元ブロック共重合体とはまったく異なるルートで合成しなければならない。ナトリウム系開始剤を用いたアニオン重合法によってε-カプロラクトン-ブタジエン-ε-カプロラクトン3元ブロック共重合体(PCL-b-PB-b-PCL)の生成が確認されたが、同時に、副生成物としてAB2元ブロック共重合体の混入も確認できた。現在、分取クロマトグラフィーにより両者を分離し、PCL-b-PB-b-PCLを精製中である。
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