研究課題/領域番号 |
12650881
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
香田 忍 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10126857)
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研究分担者 |
松岡 辰郎 名古屋大学, 工学研究科, 助手 (60252269)
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キーワード | 超音波誘起複屈折 / 高分子電解質 / ポリスチレンスルホン酸塩 / Biased法 / テトラメチルアンモニウム / 持続長 / 非線形 / イオン強度 |
研究概要 |
高分子溶液における超音波誘起複屈折が高分子のどのような運動に起因するかを明らかにするために典型的な高分子電解質水溶液であるポリスチレンスルホン酸塩水溶液で超音波誘起複屈折の分子量依存性、添加塩依存性、塩濃度依存性の実験をおこなった。また、比較のためにポリスチレン-トルエン溶液において強度依存性を二つの検出方法で検出を行った。 ポリスチレン-トルエン溶液において超音波誘起複屈折の強度依存性をBiased法とnon-Biased法を用いて測定したところ、non-Biased法では従来、高分子溶液で観測されていた超音波強度の平方根に比例する成分が観測された。また、従来の理論によるとBiased法では、高分子溶液では超音波誘起複屈折は観測されないはずであるが、超音波強度に比例する成分として観測された。このことは、高分子溶液における超音波誘起複屈折に線形(超音波強度の平方根に比例)だけでなく、非線形成分が存在することが示唆された。また、複屈折の誘起および緩和の時定数は装置時定数10μより早く、観測できなかった。複屈折が分子量に依存しなかった。これらから、複屈折が高分子鎖の局所的配向運動に起因するものであると考えれる。 ポリスチレンスルホン酸(PSS)塩水溶液で、対イオンがナトリウム(Na)のものとテトラメチルアンモニウム(TMA)のもので超音波誘起複屈折の測定を行った。Na型に比べ、TMA型のものが複屈折量が増大した。これはNaは高分子鎖にイオン結合するのに対しTMAはイオン結合しないため、鎖のstiffnessが増すためであると考えられる。また、TMA-PSS水溶液にNaClを添加すると複屈折量は減少し、イオン強度の-0.5乗に比例した。高分子電解質の持続長もまた、イオン強度の-0.5乗に比例するという説がありこのことを考えると高分子溶液における複屈折の誘起する運動単位は持続長程度のものであることが示唆された。
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