高分子電解質の一つであるポリスチレンスルホン酸塩水溶液における実験をすすめるとともに、高分子非電解質において高分子の種類や分子量を系統的に変化させて超音波誘起複屈折を測定した。また、超音波緩和スペクトルも測定した。 ポリスチレン-トルエン溶液において超音波誘起複屈折の強度依存性をBiased法とnon-Biased法を用いて測定したところ、non-Biased法では従来、高分子溶液で観測されていた超音波強度の平方根に比例する成分が観測された。 単分散ポリスチレンをもちいて分子量依存性を測定したところ、分子量10000までは、分子量の増大につれ複屈折量は増加したがそれ以上は増加しなかった。これは、末端効果で定性的には説明できる。 主鎖に沿った分極率が大きいポリカーボネートとポリブタジエンと反対の分極率異方性をしめすポリスチレン系の高分子では、複屈折の符号が逆転することがあきらかとなった。また、セグメント分極率で整理したところ単位セグメント数あたりの複屈折とセグメント分極率の間に良い相関があることが明らかとなった。 ポリスチレン系では、イオンの静電斥力により広がったコンフォメーションをとる高分子電解質の方が複屈折は大きくなった。 ポリスチレンスルホン酸塩水溶液ではイオン強度の増加と共に複屈折量は減少した。また、テトラメチルアンモニウム塩に比べ、ナトリウム塩は超音波誘起複屈折の減少量は大きく、イオン結合の寄与が考えられる。 ポリスチレンスルホン酸塩水溶液超音波緩和スペクトルでは、添加塩の種類による緩和スペクトルの相違がはっきりとは観察されず、超音波誘起複屈折の方が超音波緩和スペクトルよりも高分子電解質における局所コンフォメーション変化により敏感に応答することが明らかとなった。
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