研究概要 |
本研究では反強誘電性液晶の副次相におけるダイナミクスを解明することを目的とする.平成12年度においては,まず電気光学測定を行なった.その結果,反強誘電性液晶の代表的副次相のSmC_α^*相においてSmA相からの相転移と関係したソフトモードが観測された.Landau-Khalatnikov方程式より実験結果を解析する式を導出し,ソフトモードの緩和周波数の温度依存性を求め,我々の提案した離散モデルを基に考察した結果,SmA相からSmC_α^*相への相転移は3重臨界点に近いことがわかった.また,3次の非線型誘電率測定も行なった.電気光学測定と同様にSmC_α^*相においてソフトモードが観測されたが,さらにSmA相においても転移点近傍ではソフトモードが観測された.共鳴X線散乱測定の結果より,SmC_α^*相は周期が非常に短いSmC^*相的な構造をとっていることがわかっている.したがって,ソフトモードはスメクチックブリルアンゾーンの一般の点に位置し,巨視的分極を生じないため通常観測はできない.しかし,転移点近傍ではゆらぎにより局所的にSmC^*相の構造ができ,非線型誘電率測定によりソフトモードが観測可能になることを本研究により示した.さらに,Langevin方程式を解くことにより,実験結果からソフトモードの緩和周波数を求めることに成功し,SmA-SmC_α^*相転移がソフトモードの凍結により引き起こされることを初めて明確に示した.
|