研究概要 |
本年度の研究で以下のことが明らかになった。 1)薄膜の作製と組織化 側鎖に正電荷と負電荷を有するポリチオフェン誘導体をそれぞれ合成し、静電的相互作用を利用したself-assembly膜の作製を試みた。積層水溶液のpH、浸漬時間、溶液濃度を変化させることで、簡便に緻密な導電性高分子交互積層膜を作製できることがわかった。また、DNAなど生体物質をこれらの膜表面や層間に吸着させることが可能になった。 2)高組織体の作製 Poly(3, 4-diamino-3', 4'-dinitro-thiophene)とpoly(thiophene acetic acid)とを交互積層して得られたself-assembly膜を熱処理することで、3次元構造をもった超薄膜が得られた。この薄膜中では、導電性高分子が一次元的な半導体ワイアーを形成し、架橋した側鎖が一次元ワイアー間を橋渡しした構造になっており、新たな3次元ナノ組織体であることがわかった。 3)高組織体の電気・光学的特性の評価 上述の高組織体では、組織化される時に半導体である導電性高分子が高度に分子配向するために、無秩序な同一材料と比較するとバンドギャップの低下、導電率の向上が観察された。同様に、組織化に伴う次元性の制御により3次非線形光学効果の向上も観察された。さらに、高組織体を用いた高分子EL素子を作製し、高分子量化と組織化によりEL素子の耐久性が改善されることを見出した。
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