研究概要 |
高分子の繰り返し構造単位中に含まれる芳香環の数(芳香環密度)を減少させれば、その高分子の屈折率を小さくできることは経験的に知られている。ポリイミドに多脂環構造を導入(芳香環の排除)することによって耐熱性を保持しながら、低屈折率化が実現できる。Maxwellの方程式(ε=n^2)から低屈折率材料は電気的には低誘電率材料と等価で、芳香環を全く含まない非芳香族多脂環構造ポリイミドはエレクトロニクス素材として期待されている。初年度(平成12年度)の研究成果を以下に要約した。 1.芳香環密度が減少すれば(芳香環を排除すれば)屈折率が小さくなることを、分子分極率αを定量的に議論することによって量子化学的に解明した。さらに、高分子の繰り返し構造単位の分子体積V_<vdw>(ファンデルワールス体積)を計算できれば、αとV_<vdw>から屈折率・誘電率が予測側可能である。現在、その計算に取り組んでいる。 2.非芳香族ポリイミドはこれまで多くの研究者によって合成が試みられたが、実用に耐える高分子量でしかもfree-standingフィルムとしては得られていなかった。これは、重合初期における沈殿(塩形成)やイミド化時の解重合が原因である。重合溶媒、モノマーの化学構造や添加順序を工夫することによってフィルム成型可能でしかも優れた耐熱性を持つ無色透明な非芳香族多脂環構造ポリイミドが合成できた。 3.当初計画では初年度に新規ジアミンである2,5(6)-ジアミノ-ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの合成を行う予定であったが、数工程から成る合成経路のうちの最終工程が未完であるため合成に成功していない。経路の見直しを含めて次年度以降も挑戦する。 4.今年度購入した熱分析システムを用いて、合成した非芳香族多脂環構造ポリイミドの熱的性質(ガラス転移温度、5%重量減少温度など)を評価した。
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