研究概要 |
高分子の単位構造中に含まれる芳香環の数(芳香環密度)を減少させれば、屈折率を小さくできることが知られている。しかしながら、芳香環の排除は耐熱性の低減に繋がる。本研究では、ポリイミドに多脂環構造を導入することによって耐熱性を保持しながら、低屈折率化を実現する。Maxwellの方程式から低屈折率材料は電気的には低誘電率材料と等価で、芳香環を全く含まない非芳香族多脂環構造ポリイミドは耐熱性低誘電特性有機材料として期待される。また、無色透明であることも本ポリイミドの大きな特徴の一つである。 平成13年度の研究成果を以下に要約した。 1)昨年度までに合成が完了した新規テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2exo,3exo,5exo-トリカルボン酸-5endo-酢酸二無水物(BSDA)の立体構造をNMRで決定した。 2)新規多脂環構造ジアミンの一つである2,5(6)-ジアミノビシクロ[2.2.2]ヘプタンを、それぞれ数ステップから成る二通りの経路で合成することを試みた。いずれの場合も最終ステップでの単離精製に成功していない。専門家の適切なコメントを得、改善すべき点が明らかになりつつあるので次年度も再度、合成に挑戦する。 3)昨年度、重合溶媒、モノマーの化学構造や添加順序を工夫することによって非芳香族多脂環構造ポリイミドを合成した。今回、引き続き重合条件の最適化を図ると同時に種々のモノマーを用いたポリイミド合成を行った。具体的には2,5(6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.2]ヘプタンとBSDAを含む四種類の脂環構造テトラカルボン酸二無水物とからそれぞれ、フィルム成型可能で優れた耐熱性を持つ無色透明な非芳香族多脂環構造ポリイミドを得た。 4)昨年度購入した熱分析システムを用いて上記非芳香族多脂環構造ポリイミドの熱的性質を評価した。ガラス転移温度209-340℃、5%重量減少温度422-459℃であった。 5)非芳香族多脂環構造ポリイミドの光物性を評価した。吸収端は235nm(紫外・可視吸収スペクトル)に達し、屈折率1.522-1.542、複屈折率0.000、屈折率から評価した誘電率(ε=1.1n^2)は2.55-2.73であった。
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