ポリオレフィン類のゲル化支配因子として、分岐数、分子量、高分子/溶媒間の相互作用パラメーター(χ_<12>)を取り上げ、これらの因子とゲル形成能とのかかわりについて実験的に調べた。試料には、エチレン/1-ヘキセンランダム共重合体を用いた。まず、ゲル化溶媒を決めるために、IGCを用いてχ_<12>を推算し、χ_<12>の値が大きく異なるような有機溶媒を数種類選び出した。次に、ゲル融点を測定し、その値を高橋-中村-香川の理論(TNK理論)及び田中-Stockmayerの理論(TS理論)に適用し、ゲルの架橋長ζを推算した。このようにして推算したζが、分岐数、分子量、χ_<12>の大きさによって、それぞれどのように変化するかを検討した。その結果、以下の結論を得た。 (1)エチレン/1-ヘキセン共重合体は、χ_<12>パラメーターの値が室温近傍でχ_<12>>0.5となるアルカン系やアルケン系の有機溶媒中で熱可逆性ゲルを形成する。χ_<12>>>0.5となるシクロヘキサノンや3-ヘキサノンのようなケトン類中ではゲル化せず、それらの系はマクロな固/液分離を引き起こす。 (2)TNK理論およびTS理論によりそれぞれ推算したゲルの架橋長ζ(架橋領域に入り込むエチレン連鎖数)は、互いにほぼ一致し、この研究で用いた試料では、ζの分布はζ=5〜29程度である。 (3)ゲルを作るときの溶媒が、より貧溶媒になればなるほどζは大きくなり、また分子量が増大すると、ζも徐々に増大する。これに対し、短鎖分岐が主鎖中に増加すれば、ζは急激に減少する。
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