研究概要 |
浸透気化法や気化浸透法などに用いる水中に溶存している芳香族炭化水素やハロゲン化炭化水素を選択的に透過除去する高分子膜材料として,アルキルメタクリレートとジメチルシロキサンマクロモノマー(DMS)とのグラフト共重合体を合成した。メチルメタクリレートやエチルメタクリレートから得たPMMA-g-PDMSとPEMA-g-PDMSのグラフト共重合体は,DSC分析の結果,ミクロ相分離構造を示す2つのガラス転移点を有していたが,ブチルメタクリレートからのPBMA-g-PDMSでは,ミクロ相分離構造は観察されなかった。これらの3種のグラフト共重合体膜を用い,希薄ベンゼン水溶液と希薄四塩化炭素水溶液の透過分離特性をDMS含有率を変え測定した結果,PMMA-g-PDMS膜とPEMA-g-PDMS膜では,ベンゼンや四塩化炭素の選択透過性を示し,これらの選択透過性はDMS含有率の特定量のところで著しく向上した。一方,PBMA-g-PDMS膜もベンゼンや四塩化炭素を選択的に透過するが,これらの選択性はDMS含有量の増加と共に単調に増加していた。明らかにPMMA-g-PDMS膜やPEMA-g-PDMS膜とPBMA-g-PDMS膜との選択透過性の機構が異なることが暗示され,その相違を明らかにするため,膜の表面性質,膜内組成,膜の膨潤性,膜密度,膜内部構造などを測定した結果,炭化水素類の膜内への溶解と膜中での拡散の両因子が選択透過性に深く関係しており,特にグラフト共重合体膜のミクロ相分離構造のモルフォロジーが重要に関与していることが明らかになりつつある。
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