研究概要 |
平成12年度には,浸透気化法に用いる水中に溶在している揮発性有機化合物であるベンゼンやクロロホルムを選択的に除去する高分子膜として,アルキルメタクリレートとジメチルシロキサンマクロモノマー(DMS)とからのグラフト共重合膜を調製し,これらの膜性能を調べた結果,メチルメタクリレート(MMA)とDMSから得たPMMA-g-PDMS膜でDMS含有率が65mol%のものが,高いベンゼン選択性を示すことを明らかにしてきた。そこで,本年度はさらに高いベンゼン選択透過性を得るため,次のような概念で選択透過性の改善を試みた。すなわち,水中に微量に溶在するベンゼンをより選択的に透過させる考え方において,水の選択透過を低下させることによってベンゼンの相対的な選択透過性をより向上させるため,フッ素含有高分子添加剤としてパーフルオロアルキレートとDMSとの共重合体であるPFA-g-PDMSを合成し,DMS含有率が65mol%であるPMMA-g-PDMS膜調製用のキャスト液にPFA-g-PDMSを添加成膜したPFA-g-PDMS/PMMA-g-PDMS膜のベンゼン選択除去性能について検討した。PFA-g-PDMSの添加量が約1%まではベンゼン選択透過性および透過速度は増加したが,それ以上の添加量では選択性ならびに透過速度は共に減少した。しかし,PFA-g-PDMSの無添加膜よりは高い膜性能を示した。PFA-g-PDMS添加量変化に伴うベンゼン選択透過性を明らかにするため,これらの膜の表面の接触角測定やXPS測定を行い,さらに膜の透過型電子顕微鏡観察を行った。これらの結果から,膜表面と膜内部の構造がPFA-g-PDMS添加量によって著しく異なっていた。すなわち,PFA-g-PDMSの少量添加では膜表面が幾分かは撥水化されるが十分でなく,適量の添加で膜表面の撥水化が行われていた。また,多量の添加は膜内部のPMMAとPDMSのミクロ相分離構造が連続相でなくなるためベンゼンの選択透過性が低下されることが明らかになった。
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