航空機のクラッシュ時の乗員・乗客の生存率を高めるためには、衝撃吸収エネルギーを吸収する緩衝装置の開発が重要である。本研究においては緩衝装置の基本要素となる緩衝機構として、パイプのスプリット破壊を利用した機構、軸圧縮を受けた円管に発生する連続的局部座屈(いわゆる提灯座屈やダイヤモンドバックリング)を利用した機構、ハニカム材の圧壊を利用した機構の3つの基本要素を取り上げその力学的挙動を実験および数値解析により調べ、それらの特性を明らかにするとともに3つの要素をエネルギー吸収効率の点などから比較した。その結果次の事実が明らかとなった。 (1)パイプのスプリット破壊は比較的安定して破壊が進行する特定の亀裂本数がパイプの材質・寸法毎に存在し、亀裂の進展中圧壊荷重の変動は極めて小さい。またその特定亀裂本数で圧壊荷重が最小となる。荷重変動が小さい反面、荷重レベルは低く素材単位重量(あるいは単位体積)あたりのエネルギー吸収能は低い。 (2)スプリット破壊に関して、エネルギー吸収能を算定するために必要な圧壊荷重の予測式を導出することができた。従来の予測式では荷重は亀裂本数とともに増大するがこれは実験事実と異なっていた。本予測式によればこの矛盾点が解決され精度のよい予測が可能となった。 (3)円管の座屈を利用する機構については、素材単位重量あたりのエネルギー吸収能は高い反面、崩壊時の荷重変動が大きい。円管の座屈過程の崩壊荷重予測は数値解析により可能である。 ハニカム材を利用する機構については、素材単位重量あたりのエネルギー吸収能は円管の座屈に次いで高く、荷重変動はパイプのスプリット破壊と同様小さく安定している。ハニカム材の崩壊荷重を予測する理論式は現状ではまだ得られておらず今後の課題である。
|