弾性動揺を波動の伝播として捕らえる計算法を拡張して超大型海洋構造物の波浪中動揺を平面的に伝播する波動として捕らえた場合に得られる境界積分方程式を導き、その性質を調査して超大型海洋構造物の波浪中動揺の基礎的な物理を明らかにした。また、上記積分方程式を実際に解くために数値的技法の調査及び求解の可能性を調査する。これらの結果を踏まえて、WKBJ近似に基づく所謂波向線理論を利用して比較的簡便な計算で超大型海洋構造物の波浪中動揺の弾性挙動を求めることができること、斜め波中に問題になる頂点を通る波向線に沿って振幅が階段状に変化する欠点も、非対称型Parabolic近似により克服できることを理論的に示した。また、角部の挙動および漂流力などの2次の力を求める方程式も導いた。これを波向線理論の計算プログラムに取り入れて改良し、さらに、波下側における反射の影響を取り入れ、他機関において既に行われている実験と比較し数値計算結果がさらに改善されていることを確かめた。 また、2m角の水槽でミニスケール弾性模型実験をおこなった。模型はOHPシートを利用して実機の1/2200スケールの実験を行うことに成功した。実験では弾性変形を既存の超音波式変位計で計測することができたので、非常に廉価にかつ手軽に、しかし、高精度に、既存の施設では為し得なかった極短波長(λ/L=0.08)での弾性模型実験が行えた。この実験による計測値と前述のParabolic近似を取り入れた弾性挙動推定プログラムによる計算値との比較は驚くほど良く一致しており、波長が十分短ければ、超大型浮体の弾性挙動はWKBJ近似で表せることが確認された。
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