研究概要 |
前年度までに開発した津波による浮体応答シミュレーション法を用いて,より現実的な津波の設定からそれによる浮体応答までの計算を可能とするシステムを構築した。 1)断層モデルを用いて設定海域における津波初期波形を求め,長波近似による2次元平面シミュレーションにより津波伝搬を推定する。2)水深約50m程度までは津波の分裂影響は小さいためこれを考慮しないが,50m以浅では,2次元N-S方程式あるいは2次元境界要素法による波形伝搬計算を行う。その際,自由表面の非線形性は考慮される。3)浅海域での波形伝搬計算では固定浮体を考慮し,津波強制力が同時に計算される。4)浮体及び係留索応答は造波減衰のメモリ影響を考慮した時間領域の運動方程式によって解かれる。 上記計算行程が本研究で開発されたシステムである。また,津波の分裂が浮体応答にどのように影響するかを検討した。基本的にはその影響は小さいことが分かった。その理由は分裂してもなお,数十メートル規模の浮体に対しては十分に長い波であるためであった。そのため,比較的沖合いに設置され,かつ非常に緩いカテナリー係留された浮体については津波による危険性が極めて低い結果を得た。しかし,この結果は海岸付近に設置された浮体には当てはまらないことも考察された。なぜならば,比較的沖合いで津波の危険性が低下する原因として,十分に浮体が変位可能であることが前提であったためである。 本研究では,任意の設定海域で発生した津波が浅海域に伝搬し,浮体応答を誘起した場合の影響について実用的な計算時間でそれを評価可能とするシステムが構築された。
|