北海道南部(駒ノ湯温泉、八雲鉱山、上ノ国鉱山)、北海道央部(大江鉱山、稲倉石鉱山)および北海道東部(湯の滝温泉、音更町)のマンガン堆積環境の水質および土壌の調査を行い、環境試料から比較的マンガン活性の高い微生物を分離することを試みた。その結果、駒ノ湯温泉土壌由来バクテリア、駒ノ湯温泉土壌由来真菌、稲倉石鉱山土壌由来バクテリアの3株が得られたが、これらはいずれもマンガン酸化速度、耐性を維持できるマンガンイオンの上限濃度において、現在マンガン酸化菌としてATCCに登録されている標準株には及ばないものであった。 ATCCに登録されているマンガン酸化菌標準株3種のうちの2種(ATCC43182とATCC51168 Leptothrix discophora)によりマンガン酸化実験を行い、マンガン酸化挙動の特徴、および得られるマンガン堆積物のキャラクタリゼーションを行った。これら2種の菌株は鞘を形成し、通常の好気性微生物の培養方法である振とう培養によっては鞘が壊れやすく、この鞘の中にはマンガン酸化酵素が含まれているため、振とうによってマンガン酸化速度は遅くなる、あるいは酸化できなくなることがわかった。しかし、この菌を静置培養によってマンガン酸化を行えば、初期マンガン濃度25ppm程度までは酸化できることが確認され、得られたマンガン堆積物は非晶質でMnの価数は3〜4価になっていることがX線光電子分光法により明らかであった。鉱山廃水を模擬した試料を調製し、この菌(ATCC51168 Leptothrix discophora)を使ってマンガン除去ができるかどうかを試した。その結果、微生物的マンガン酸化除去には、炭素源は必須であること、ビタミン類は添加しなくても酸化速度に大きな影響を及ぼさないこと、その他の基本成分(無機塩)は添加しなくても酸化するが、速度は遅くなることなどが明らかになった。
|