研究概要 |
北海道南部のマンガン堆積環境から分離したマンガン酸化真菌を用いて、マンガン酸化除去条件を検討し、マンガン酸化によって得られた堆積物のキャラクタリゼーションを行った。 分離した真菌は有機炭素源三成分(glucose,peptone,yeast extract)がそれぞれ0.5g/Lずつ含まれている培地中では増殖が認められたが、Mn(II)イオンの酸化を伴わなかった。有機炭素源三成分をそれぞれ0.05g/Lとした場合には、Mn(II)イオン酸化が認められ、17ppmのMn(II)イオンをおよそ35時間で酸化除去できた。これはマンガン酸化細菌Leptothrix discophoraのMn(II)イオン酸化可能な上限濃度の6倍程度に相当する。有機炭素源三成分のうち、glucoseを除いた場合には酸化速度が速くなり、yeast extractを除いた場合には遅くなった。これらのことからこの真菌は、有機炭素源を制限した場合にMn(II)イオン酸化活性を発現するようになること、ただし安定な酸化速度を維持するためにはpeptoneとyeast extractは不可欠であること、形成された沈殿物は非晶質マンガン酸化物であることがわかった。さらにこの真菌の酸化可能な上限Mn(II)イオン濃度を調べたところ、50ppmMn(II)イオン濃度を1週間で酸化除去できることを確認した。このことはより少ない有機炭素源を使って、排水基準(10ppm)以上の高濃度マンガン含有水を中性領域において生物処理により基準以下に低減できることを示している。形成されたマンガン酸化物は真菌との生体親和性に優れ、マンガン回収に有効であった。
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