ガスハイドレートは、ケージ状の水分子と内包されるゲスト分子とから成る包摂化合物の一つであり、特にメタンが内包されたメタンハイドレートは海洋底堆積物に地球規模に分布している。メタンは、地球の温暖化に二酸化炭素より高い効果を与えることが知られ、また一方では、メタンハイドレートは次世代の豊富な天然資源として期待される物質でもある。従って、メタンハイドレートの挙動、特に、高圧下の生成、水和数変化、構造変化、分解過程を知ることは、資源・環境問題に対して緊急の課題であるとともに、水-メタン系の物質科学の基礎を理解する上に重要である。 本年度は、ダイヤモンドアンビルセルを用いて、メタンハイドレートの高圧実験を行い、X線回折、及び、ラマンスペクトロスコピーのその場観察を行い、1万気圧以上で高圧構造に構造変化することを明らかにした。すなわち、メタンハイドレートは室温下では、0.2-0.3万気圧ではよく知られている構造Iである。この構造を圧縮していくと0.8万気圧で、六方晶系の構造に転換する。さらに、この六方晶の構造は、1.6万気圧で、斜方晶系構造に変換し、さらに、2.1万気圧では、別の斜方晶系構造へと転換する。そして、この斜方晶構造は8万気圧以上においてもまだ存続しうることが明らかとなった。これらの知見は、地球環境、及び、メタンの地球表層から深部への循環に、新たなモデルを提供するものである。
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