研究概要 |
本年度は,主としてカドミウムで汚染された粘土質土壌からのカドミウムの浄化について,物質輸送方程式による数値解析と実験の両面から検討した。その結果として,動電土壌浄化プロセスを数値解析から予測できること,また,陰極側からの塩基の土壌への拡散を抑制することによりカドミウムを速やかに陰極槽に除去できることを明らかにした。陰極側からの塩基の土壌内への拡散を抑制しない場合,陰極近傍で土壌pHの急激な変化が見られ,その領域にカドミウムが水酸化物として濃縮することも分かった。また,土壌内の電位変化および電流密度変化を監視することにより,土壌内で起こる浄化の進行具合を把握できることも明らかにした。また,土壌内に鉄酸化鉱物や炭酸塩鉱物が多く含まれる緩衝能高い土壌に対して動電土壌浄化技術の適用可能性を検討する目的で,粘土質土壌を実験的に条件付けを行い,土壌のpHが6以上に保持される環境下において,陰極槽にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を投入し,EDTA陰イオンが陽極方向に移動する過程で,土壌内に収着しているカドミウムとキレート錯陰イオンを形成し,陽極槽に速やかにカドミウムを除去できることも,数値解析と実験の両面から明らかにした。陰極液にEDTAを使用しない場合,カドミウムは土壌内に固定されたままで,カドミウムの浄化は遅々として起こらなかった。このことからもEDTAのようなキレート剤を使用することにより動電土壌浄化技術を緩衝性地盤にも適用できることを明らかとした。さらにカドミウムおよびトリクロロエチレン(TCE)で汚染された地盤を想定し,動電土壌浄化法と地下水揚水法の併用を,数値解析により検討し,難透水性地盤においては特にTCEの浄化に地下水揚水法の併用が効果的であることも明らかにした。今後実験による検証を行う予定である。
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