研究概要 |
イオン移動や電気浸透流によって地盤中を移動できるのは,間隙水中に溶存している物質だけであり,土壌に吸着あるいは沈殿物として保持された重金属は,それらが間隙水中に溶出しない限り,効果的に除去されることはない。大部分の重金属の間隙水への溶解性はpHの上昇とともに減少する。例えば,カドミウムで汚染されたカオリナイトに動電学的手法を適用した場合,陽極で発生した酸の作用により土壌が酸性化された領域ではカドミウムは除去されるが,陰極で発生した塩基の作用でpHが高くなる陰極近傍でカドミウムが水酸化物として蓄積し,土壌から除去できないことが示されている。また,酸化鉱物や炭酸塩鉱物などの含有量が多く,pHに対して強い緩衝能を持つ土壌では,陽極で発生する酸の作用による土壌の酸性化は起こらず効率的な浄化は期待できない。また,土壌の強い酸性化は,土壌の部分溶解などによる土壌特性の変化を起こす可能性がある。したがって,重金属で汚染された土壌に対して中性付近で動電学的手法が適用できる方法を開発することが望まれる。 キレート剤は金属と結合できる配位子を2つ以上持っており,安定なキレート錯体を形成する。代表的なキレート剤にエチレンジアミン四酢酸(EDTA)がある。EDTAは重金属との錯形成能力が高く,また,土壌への吸着性が比較的小さく,キレート剤の中では比較的安価であるという特徴がある。本研究では動電学的手法による重金属汚染土壌の浄化に錯形成反応を利用するための基礎研究として,カドミウムで汚染されたカオリナイトを用い,陰極槽にEDTAを投入することによりEDTA(負イオンとして)を陰極から陽極方向に移動させ,その過程でカドミウムと錯形成反応を起こさせることによるカドミウムの抽出性および移動挙動を検討した。 その結果,EDTAが陰極から陽極方向に移動する課程でカドミウムと錯形成反応を起こし、カドミウムを土壌から陽極槽に除去することが可能であることが明らかとなった。
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