還元熱水の生産ゾーンへの混入量の定量的評価は、既存の地熱開発域において貯留層を持続的に運転維持していく上でますます重要となってきている。その結果、フィールド全体を対象とした生産ゾーンおよび還元ゾーン間での還元熱水の混入量の評価から、生産井と還元井の坑井間での詳細かつ定量的な評価が要求されている。そこで、坑井が複数存在する場合、各坑井をゾーン(タンク)で表現し、坑井間での還元熱水の生産井への混入量(混入率)を時系列上で推定する数学モデルを開発し、モデルの有用性をフィールドデータ(3本の生産井と3本の還元井)を解析することにより確認した。なお、このモデルでは従来のモデルと同様に天然のトレーサである塩化物イオン、硫酸イオン、水の安定同位対比を指標として用いた。 その結果、各ゾーンの体積を固定した解析では、1本の還元井から各生産井への還元熱水の混入率を合計した値が1を越える場合が生じることがわかった。この矛盾を解決するためには、各坑井を表すゾーンの体積を未知パラメータとして、これを自動的に推定する必用があり、現在解析モデルの改良を試みている。
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