本研究はナタネ染色体のインプリンティングを受ける遺伝子領域の同定とその制御機構等の解析を目的とした。動物ではインプリントされた遺伝子の特徴としてシトシンのメチル化があり、このメチル化は生殖細胞の成熟過程でおこる。植物でも同様な機構が働いていると考え、ナタネにおけるインプリントされた遺伝子領域を同定するために、花粉でメチル化され、子房(卵細胞)ではメチル化されていない遺伝子領域をMS-RDA法で網羅的にクローニングした。得られたクローンの1つBnMyb1は動物Myb遺伝子と高い相同性を示した。 平成12年度は、本遺伝子周辺領域をさらにクローニングし、幾つかのクローンを得た。それらの構造解析により、本遺伝子を含む約20Kbの領域の構造を明らかにした。また、BnMyb1遺伝子断片に相同な領域はミトコンドリア遺伝子にも存在することが明らかになった。得られた遺伝子断片を用いて、メチル化DNA感受性制限酵素によるDNAメチル化の解析を行ったところ、花粉DNAでメチル化の程度の高い領域および低い領域が存在すること、および、そのようなメチル化レベルの分布が子房のDNAと異なることが判明した。また、本遺伝子が花粉および子房のどちらで発現しているのかをノーザンブロットで解析したところ、子房でより多く発現していることが判明した。現在、花粉成熟過程のどのステージでメチル化が起こるのかを解析中であるが、メチル化領域の分布と発現の相関を明らかにする予定である。
|