本研究は、パンコムギのもつ近縁異種植物との交雑親和性に関与する遺伝子の一つであるKr1について、ディファレンシャル・ディスプレイ法(DD法)により、cDNAを合成し、塩基配列の特性からその機能や同祖遺伝子間の変異の特徴を明らかにしようとするものである。平成13年度は、Kr1遺伝子の座乗する5B染色体に関する組換え近交系を育成し、それぞれの系統のライ麦との交雑親和性の有無を検定した。また、組換え近交系を利用したDD法によるcDNAバンドを多数えることを目的に研究を行った。 1)組換え近交系の育成と交雑親和性検定:Hopeの5B染色体に由来する新たなくみ買え近交系統を30系統育成した。そのうち21系統についてライ麦との交雑親和性を検定した。交雑親和性が60%以上のものが6系統、20%〜60%の中間的な系統が9系統、20%以下のものが6系統と分離し、明確な境界がなかった。さらに、詳細に検定する必要がある。 2)ライムギとの交雑親和性の高いパンコムギ品種Chinese Springに交雑親和性の低い品種Maraの5B染色体を置換した系統と、Chinese Springとを交雑したF1に由来する組換え近交系統18系統を用いて、雌蕊からmRNAを抽出して交雑親和性の高い系統に特有のcDNAバンドを多数得た。これらを再増幅してクローニングし、シークエンスを試みたが、目的とするKr遺伝子に対応すると思われるcDNAを得ることができていない。さらに、クローン数を増やしているところである。
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