キャベツとコマツナとの種間キメラに由来する細胞質雄性不稔のミトコンドリアの構造を中心に葉緑体ゲノムの構造と特徴を調べた。その結果、既知のミトコンドリア遺伝子をプローブにしたRFLPパターンは雄性不稔系統ではやはりダイコンのオグラ細胞質とほぼ同様であり、これまでと同様、ヘテロゲノム分子種の構成の割合を変更する調節変異である可能性が高くなってきた。そのため、ダイコン属以外のB.rapaやB.oleraceaおよび他の材料についてタイコンの指標遺伝子であるorf138とオグラatp6の特異的プライマーを使って探索したところ、小コピー数ながら、ブラシカ属両種の数品種とMoricandia arvensisにその存在が認められた。このことは、もともとオグラ型雄性不稔関連遺伝子を含むゲノム種がアブラナ科分化の過程で保存されてきていることを示している。しかし、なぜそれらゲノム種が選択的増減を生じえるかは回復系統の発見や導入などを行い、核ゲノムとの相互作用、雄性不稔の創成などを目的的に進めなければならない。現在材料の育成を行いつつある。また、これまでは個別遺伝子やそのプローブを用いて調べてきたが、ゲノムのマップを作るなどして、個々の遺伝子を越えたゲノムレベルの解析が必要である。 葉緑体ゲノムについても、これまではイネのプローブをもとに解析を進めてきたが、アラビドプシスの葉緑体地図を参考にして、雄性不稔と平行して変異しているゲノム構造を明らかにするための、クローニングを進めている。
|