レトロトランスポゾンの活性化がサツマイモの品種退化や突然変異の蓄積に及ぼす影響を解明するため、これまでの研究によりサツマイモ・ゲノムから得られたTy1-copia型レトロトランスポゾンの末端配列(LTR : Long Terminal Repeat)3種類とそれに隣接する内部配列を利用して、サツマイモ品種間や近縁種間におけるそれら配列の挿入位置の違いを検出した。検出方法としては、Thermal Asymmetric Interlaced PCR(TAIL PCR)、Single Primer法、因子間の多型検出法(IRAP : Interretr otransposon Amplified Polymorphism)およびマイクロサテライト配列との多型検出(REMAP : Retro transposon Microsatellite Amplified Polymorphism)を用いた。その結果、2種類の配列については、主として種間レベルの挿入位置の多型が検出されたが、1種類については、明瞭な品種間多型が得られ、この配列が種分化後も転移活性を失っていないことが示された。この配列については、さらに、マイクロサテライト配列との間の挿入多型などを調査している。 培養によるレトロトランスポゾンの転移を検証するため、サツマイモ品種「高系14号」などを材料に、茎頂培養から得られたカルスからcDNAを合成し、同品種から単離されたレトロトランスポゾン逆転写酵素配列を用いて、RT-PCRを行ったところ、ポリアデニル化された3'末端の酵素(RNase H)配列が得られた。この配列から推定されたアミノ酸配列は、植物において転移が確認されているレトロトランスポゾンの配列と極めて高い相同性を示したので、培養により転移能のあるレトロトランスポゾンの配列が転写されていることが示唆された。引き続き、この配列に隣接するLTR配列を解析している。
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