今年度までの研究計画の目標は、次ぎの2点である。 1.開発したRf-1遺伝子近傍のDNAマーカーを利用した巨大DNAクローン(TAC)の選抜、および、選抜したTACクローンを起点としたコンティグの作成。 2.ファインマッピング用集団の作成。 1.TACコンティグの作成 インディカ型イネのゲノム由来のTACクローン、20736個をスポットしたフィルターのスクリーニングを行なった。このフィルターでイネゲノムの約5倍がカバーされると計算される。 3つのRf-1遺伝子近傍のDNAマーカーを用いてスクリーニングを行なった。2つに関してはポジティブクローンが得られなかった。残り1マーカーでは複数のクローンが得られたが、解析の結果、何れについても構造が異なっておりホモログであると推測された。結果としてRf-1遺伝子近傍のDNAマーカーに対応するクローンは得られなかった。 イネのゲノムシークエンスプロジェクトによりイネのBACクローンに関する情報とそのシークエンス情報が公開されつつあるためスクリーニングは中断し、公開された塩基配列情報を元にRf-1遺伝子の詳細な位置の解析を開始した。 公開されている塩基配列でRf-1遺伝子に近接すると考えられるものを抽出し、マイクロサテライトの検索を行なった。対象とした6個のBACクローン全てでマイクロサテライトが見出された。2塩基をモチーフとするマイクロサテライトを利用して10個のDNAマーカーを作成した。これらの中からファインマッピングに用いる系統間で多型を示すマーカーを選抜した。 2.ファインマッピング集団の作成 Rf-1遺伝子領域内での詳細な連鎖分析を行なうための材料の育成を行なった。すなわち、遺伝子型Rf-1/rf-1で細胞質がCMS型のF_1植物の花粉を遺伝子型rf-1/rf-1で細胞質が正常型の植物に交配して得た植物体を5個のDNAマーカーを用いて解析し、Rf-1遺伝子近傍で組換えを起こした個体を選抜した。さらに、得られた組換え個体の自殖後代の遺伝子型を解析し、Rf-1遺伝子近傍で組換えを起こし、かつ遺伝子型がヘテロとなっている個体を選抜した。現在、選抜した個体を栽培中である。今後、これらの植物体から得られる大量の自殖後代を用い、1.で作成したDNAマーカーでRf-1遺伝子の位置を絞り込む予定である。
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