植物の重要な窒素源である硝酸塩は、野菜などに多量に蓄積して存在している。現在食品中の硝酸塩の存在は亜硝酸塩の前駆物質として食品衛生上また健康上の重要な問題点となっている。本研究では、この硝酸塩を低減させた野菜を作出するために硝酸同化系に関与する遺伝子(とくに硝酸還元酵素)を遺伝子組換えにより導入し、強制的に硝酸イオンを消費させることにより硝酸塩含量の低下した野菜を作成することを目的としている。 (1)硝酸還元酵素遺伝子が導入された硝酸還元酵素欠損変異株の形質転換体の解析 形質転換体の生化学的、分子生物学的解析から、硝酸還元酵素mRNAの過剰発現と高いレベルの硝酸還元酵素活性が得られた。このことから、硝酸塩含量の低下とタンパク質含量の増加を期待することができる。 (2)硝酸イオン、亜硝酸イオン含量の測定法 硝酸イオンの定量は今までCataldo'sらの方法、また亜硝酸イオンの定量はジアゾカップリング反応による比色定量によっていたが、今回キャピラリー電気泳動を使用することができたので、定量の可能性を検討した。その結果、硝酸イオンは、キャピラリー電気泳動での定量が可能であったが、亜硝酸イオンは、従来どうりの方法で行うこととした。 (3)ホウレンソウおよびレタスへの硝酸還元酵素遺伝子の導入 レタス(研究代表者)とホウレンソウ(研究分担者)を材料とした。 レタスは植物体再生方法がすでに確立している。また、ホウレンソウは本研究を着手するまでに再分化条件が確立していなかったが、最適な培養条件を検討した結果、植物体の再生体を得ることができた。 硝酸還元酵素遺伝子の導入は、アグロバクテリウムを用いた方法で行い、形質転換実験を行った。レタス、ホウレンソウともに形質転換体の選抜を終了し、硝酸イオン及び亜硝酸イオン含量等の比較検討を行うことができた。 また、高栄養であるかの指標としてアミノ酸含量またタンパク質含量についても比較検討をおこなうことにより興味ある結果が得られるものと期待されるので、今後の検討課題である。
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