ラッカセイは開花期間が長く、また結莢率が低く低収量である。これは、栄養生長と生殖生長の重複期間が長いため、同化産物の子実への転流・分配が効率よく行われていないためと考えられる。本研究の目的は、子実への同化産物の転流・分配に及ぼす植物ホルモンの影響を明らかにすることである。 まず始めに、子実形成期から成熟期における各器官(主茎、分枝、子房柄、莢)への糖の転流割合を調べた。次に、ABAの葉面散布による子実肥大効果を調べた。さらに、ラッカセイ種子は、約30%のタンパク質を含むことから、その肥大及び成熟には種子への効率よい窒素の転流が重要である。そこで、窒素転流に及ぼすアブシジン酸(ABA)の影響を明らかにするため、重窒素(^<15>N)を用い子実への転流割合を調べた。また、ABA葉面散布が、窒素の主な転流形態である遊離アミノ酸にどのような影響を及ぼすかを検討した。 莢の内側の紙状組織から採取した溢泌液に含まれる糖は、主にサッカロース、グルコース、フラクトースであり、それらの合計含有量は、他の器官と比べて著しく高かった。また、莢実の発育にともなって増加し、高いシンク能を持つことが明らかになった。 ABA処理による最終的な子実収量の増加は認められなかったが、全子実数に占める大きな子実(0.7g以上)数の割合は、無処理区と比較して増加し、特に開花後期の子実の肥大に効果が見られた。これは、ABA処理により処理後10日目、20日目の成熟途中の子実中により多くの^<15>Nが分配されたためと考えられた。また、ABA処理により、主茎基部及び開花後期の子房柄からの溢泌液中のアスパラギン含有率が増加し、さらに種皮中の全遊離アミノ酸の子葉への転流が促進したためと考えられた。
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